研究コラムの記事
百寿者こぼれ話1(特別招聘教授:広瀬 信義)
私ども百寿総合研究センターは、2000年から包括的な百寿者調査を行ってきました。はじめは東京地区だけでしたが(東京百寿者研究)、2002年から全国の超百寿者(105歳以上の方を言います)を開始して現在も続けています。
沢山の百寿者の方にお会いしました。百寿者の方はとても魅力的な方が多くて毎回楽しんで調査をしています。このお話は、調査で出会ったエピソードや百歳研究がどのように行われているかなどをご紹介します。百寿者調査や研究に実際に参加しているように思っていただけると幸いです。
2000年から東京地区の百寿者の方の調査を始めました。その頃聞いたお話です。
百寿者の方がまだ小さな子供だった頃の話です。百寿者の方のお祖母さんが昔話をしてくれました。多分江戸時代の頃の話だったと思います。自分は小さくてお祖母さんの話を聞いていられませんでした。話し始めると直ぐにどっかに行ってしまいました。多分良く聞くととても面白い話だったのではないかと今では残念に思います。さて自分が年をとって、孫やひ孫が出来たとき、自分の若い頃の話を聞かせようとすると、孫たちはすぐにどこかに行ってしまいます。寂しい気がします。多分私のお祖母さんも同じように考えていたのだと思います。いつの時代にも変わらない感じではないでしょうか。
Aさんは大阪のT市の方です。年齢は110歳を超えている女性です(ちなみに110歳以上の方をスーパーセンテナリアンと言います)。この方が110歳になったお祝いに市長さんが記念品を贈ることにしました。そこで市長さんは施設の方にAさんはお祝いに何がほしいか聞いてほしいとお願いしました。施設の方がAさんにお祝いに何がほしいかと尋ねました。Aさんは“香水を貰いたい”と答えました。施設の方はビックリしてどうしてと聞きました。Aさんは“私は自分の鼻がきかないから,感じないけど、自分が臭いのではないかととても気になっている。施設の方も迷惑しているのではないかと思う。だから香水をつければ少しは臭わなくなるのではないかと思う”とお話になりました。そこで市長さんは香水を送りました。私どもが調査でAさんにお会いしたとき,とても良い匂いがしました。同行した女性の研究者の話ではシャネルだと言うことでしたが、私には良い匂いしか分かりませんでした。
私自身は百寿者調査をはじめて20年くらいになります。こんなに長い間調査研究を続けるとは思いませんでした。理由は百寿者とそのご家族,介護されている方がとても魅力的な方々であることもその一つです(前にも述べましたが)。調査を始めた頃は、百歳を調べて何が分かるのかとよく言われました。今でも言われることがあります。後でお話するように,百歳の方は幸せな健康長寿を達成した方だと私どもでは考えています。だから百寿者研究は単に健康長寿の秘訣を明らかにするだけでなく,幸せな健康長寿の秘訣を明らかにする事だと思います。また私どもは人間ですので、ヒトが老化をするとどうなるのかを知ることが大切だと考えています。百寿者の方は、ヒトの究極の老化像を表していると思います。 次回はGeroscienceの話をしたいと思います。