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【論文掲載のお知らせ】百寿者・高齢者におけるAdiponectinに関する論文がeLife誌に掲載されました。
アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されるサイトカインの一種で血中に高濃度で存在することが知られています。これまでに、肥満、糖尿病、メタボリックシンドロームなどで血中アディポネクチン濃度が低下することから血中アディポネクチン濃度を高めることは生活習慣病や循環器疾患の予防・治療に有益であると考えられてきました。しかし、最近、高血中アディポネクチン濃度は循環器疾患のリスクであることが報告されました。そこで、我々はこれまでの調査に参加いただいた百寿者812人及び超高齢者1498人のデータを利用して、百寿者及び超高齢者での血中アディポネクチン濃度と関連する因子の探索及び死亡率との関連解析を行いました。
その結果、血中アディポネクチン濃度は100歳を超えて有意に上昇し、この集団でも糖尿病有病率と負の相関を示し、ゲノムDNA中の二箇所の多型(CDH13, ADIPOQ)と相関をすることが明らかになりました。さらなる詳細な解析の結果、超高齢者ではBMIを含むこれまで知られている因子が高血中アディポネクチン濃度と関連しましたが、百寿者ではBMI(ボディーマスインデックス)は関連を示さなくなっていました。最後に血中アディポネクチン濃度と死亡との解析を行った結果、血中アディポネクチン濃度が高い超高齢男性は死亡率が高かったが、超高齢者女性及び百寿者ではその傾向が見られませんでした。
以上の結果から、血中アディポネクチン濃度は100歳を超えるまで年齢とともに増加し、BMIを含む血中アディポネクチン濃度に関連する既知の主要因子の寄与は年齢によって異なり、その生理学的意義も高齢者では年齢によって異なることが示唆されました。
本研究は、9月28日にオープン・アクセスのオンライン科学雑誌eLifeに掲載されました。
Takashi Sasaki, Yoshinori Nishimoto, Takumi Hirata, Yukiko Abe, Nobuyoshi Hirose, Michiyo Takayama, Toru Takebayashi, Hideyuki Okano, Yasumichi Arai. Status and physiological significance of circulating adiponectin in the very old and centenarians: an observational study. eLife 2023 12:e86309.