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慶應義塾大学医学部 百寿総合研究センター公式ページ

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川崎元気高齢者研究

川崎市における高齢者の
暮らし方と健康に関する学術調査
The Kawasaki Aging and Wellbeing Project (KAWP)

https://www.pref.kanagawa.jp/documents/39108/keio_university.pdf

 近年、世界の国々で平均寿命が延びており、人口の高齢化が進んでいます。日本人の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳(令和元年 簡易生命表)であり、いずれも世界のトップクラスです。生きている限りは元気でいたい、という願いは万国共通ですが、統計では85歳以上の高齢者の約半数は要介護または要支援の状態にあります。これまで世界中の高齢者研究の専門家は、どうしたら元気で長生きできるかについて研究してきました。その結果、食事や運動習慣など個人の健康への取り組みに加え、地域とのつながりや幸福感を高めることが健康長寿達成のカギであることがわかってきました。

 慶應義塾大学では1992年から百寿者(百歳以上の高齢者)調査を行い、遺伝子の多型性、病気のなりにくさ、性格や人生に対する考え方など、様々な要因が健康長寿の達成に関わっていることを明らかにしてきました。さらに、2008年からは東京都心部在住の85歳以上の高齢者の健康と生活習慣に関する学術調査を開始し、これまで百寿者研究から明らかになった遺伝子の多型性や血液中の物質が、一般の高齢者の健康長寿とも関係しているのか、検証を行っています。

 高齢者の健康維持や増進に生活習慣の改善など個人の取り組みだけでなく、地域社会とのつながりの重要性が認識される中、慶應義塾大学では、2017年より川崎市と共同で、日常生活に介護を必要としない85-89歳の川崎市民の方を対象に、健康・生活・地域とのつながりを検証する「川崎市における高齢者の暮らし方と健康に関する学術調査 (The Kawasaki Aging and Wellbeing Project (KAWP) 」を実施しております。この研究は、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)リサーチコンプレックス事業の支援を受けて行われ、その成果は市民公開講座などを通じて、川崎市の高齢者の方々をはじめとした一般の市民の皆さまにも情報を発信しております。

研究目的

本研究の目的は、日常生活において介護を必要としない85~89歳の川崎市民の方を対象とし、健康と生活の質(QOL)の維持につながる要因を、身体的領域(医療・介護)、心理的領域(幸福感・認知機能)、生活習慣領域(食習慣・運動習慣・趣味)、地域社会領域(社会参加・地域環境)から多面的に検討することです。

  1. 01研究では、自立から要介護に至るプロセスをいかにして可視化するかが大きなテーマです。経済協力開発機構(OECD)の国際調査によれば、要介護者は加齢とともに増加し、特に85歳以降は急増するといわれております。そこで川崎市の協力をいただき、日常生活に介護を必要としない85歳~89歳の川崎市民の方 約1,000名に研究対象者としてご参加いただきました。
  2. 02要介護の原因の第一位は脳血管性疾患ですが、高齢になるにつれて脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折や変形性膝関節症などの整形外科疾患や認知症の割合が増します。さらに最近注目されているサルコペニアやフレイルはふだんの日常診療で診断されるケースはまれで、身体活動や歩行速度、握力など機能評価や、高齢期うつなど心の健康の評価も重要となってきます。
  3. 03川崎市、神奈川県後期高齢者医療広域連合との共同により、研究対象者ご本人の同意に基づき、医療・介護保険情報を研究利用させていただくシステムを確立しました。これにより要介護に至った時期、およびその契機となった疾病の解析が可能となり、これまでにない確度で要介護プロセスの可視化が可能となります。

研究方法

1.基礎調査

本研究は、研究参加者の皆様の健康状態について初回に調査する「基礎調査」と、その後の皆様の健康状態の変化について調査する「追跡調査」から構成されています。

基礎調査は郵送アンケート調査と病院で行う健康調査があります。健康調査では、慶應義塾大学医学部の医師による診察(問診、血圧測定、診察)、体力テスト(握力、歩行速度、下肢筋力)、心電図検査、頸動脈エコー検査(動脈硬化の度合いを判定します)、心エコー検査、聴力検査、認知機能検査、爪床毛細血管顕微鏡検査(毛細血管の血流度合いを判定します)、バイオインピーダンス法による筋肉量の測定、血液検査、尿検査、唾液検査、頬粘膜調査、便検査、身体活動量の測定(日常生活での歩行、運動、家事などの活動量を計測)、整形外科調査(骨密度検査、脊椎レントゲン検査)となっております。

2.追跡調査

基礎調査を受けて頂いたそれ以降、健康状態がどのように変化するか、またその変化にどのような生活習慣、社会環境が影響しているか明らかにすることは、新しい高齢者の予防医療、社会政策を考える上で大変に重要です。そのため、基礎調査実施後6か月おきに健康状態に関する簡単な電話による聞き取り調査を行っております。

調査の3年後、6年後には2017年から2018年に実施した基礎調査とほぼ同じ内容の調査を行う予定でおりましたが、新型コロナウィルス感染拡大を受け、2020年に予定されていた3年後の追跡調査は2021年以降に延期されました。

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